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「サイクリングロードは宝物でいっぱい」

いつも変わらないあの風景、この時間。ああ、待ち人きたる。いつも同じ場所ですれ違うあのサイクリストのライディングフォームやいつものウエア、愛用のバイクは、前方にうっすらと見える機影で判別できるようになった。ただ、道ですれ違うだけという、なに気ない一連の作業だが、「朝起きて、まず顔を洗って、まず牛乳を飲む」といったルーティーンワークのように、その一部がすっぽりと抜けてしまうと、そこからの流れが滞り、ギクシャクして気持ちが悪いものだ。

毎日のようにサイクリングロードを走っていると気がつくことがある。路面のひび割れ、すっぽり欠けて穴があいているところ、さらには落ちている空き缶、なぜかいい香りがする場所......。
些細なことだがこれが己の空間の一部であり、それらの存在を確認することで今日も平和だと安堵する。延々とつづくまっすぐな道はつまらないどころか、小さな使命を達成し、満足感を得ることができる。

執筆作業が煮詰まらないときは、難しいことを考えず走る、走る。反対にペダリング効率とはなんぞや、と筋肉と対話しながら走るなんてちょっとアブナイ感じでも信号がないので効果的だ。
10年以上ペダルを回していても、次は"この回し方を試してみよう"というひらめきがある。奥が深すぎる。
FEATUREPhoto: WADA Yazuka
FEATUREPhoto: WADA Yazuka
ここサイクリングロードは、10年以上前は、ほとんど通行人もサイクリストもなく、利用者全員の顔を覚えられるほどであった。同じサイクリストなら尚更で、よく見かける人なら、話しかけたりしたものだ。当時は大先輩のプロサイクリストもよく利用していて、先方にも顔を憶えられてずいぶんと会話もした。それは縁となり、年月が経ってお互いに年をとった今でも交流はある。

それが今はどうだろうか。利用者増加は大歓迎だが、マラソンランナーやサイクリスト枯あふれ、完全にオーバーフローしている。"知らない人、関係ないね"が多すぎる......。
ちょっとした心づかいがあれば、「マナー」なんていう様式は必要ないはず。限られた空間を共有しているのに、もったいない。

ケータイとかGPSとか、コミュニケーションツールが発達する今、アナログが気持ちいい。せっかく人力で走るという超効率が悪くてアナログな乗り物に出会ってしまったのだから、そんなやり取りをしようではないか。
「ウィッス!」「おはよう」
その一言で世界が変わるかもしれないね。

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山本健一(やまもとけんいち)
自転車乗り。編集・ライター。自転車専門誌の編集・ライターが生業。昔、ちょっとだけレースをかじっていた経験あり。とはいえ成績はいまひとつ。
1976年生まれ。身長187cm、体重70kg。足のサイズは29cm。

写真家:和田やずか
1975年生まれ・千葉県出身。
97年よりツール・ド・フランスをはじめ世界の主要レースを撮影。代表作にエウスカルテルチームに帯同した写真集「R」、「f」がある。専門学校東京ビジュアルアーツ・写真学科スポーツゼミ講師。
   
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