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「自転車王国ベルギー」

ベルギービールにゴディバのチョコレートそしてブリュッセルの小便小僧。日本人の多くがベルギーという国のイメージとして直ぐにこれらの品々を思い浮かべるであろう。
しかし、ベルギーのイメージとして、自転車レースを思い浮かべる日本人はどの位居るだろうか。

「ツール・ド・フランス」と「ジロ・デ・イタリア」があまりにも有名なために、自転車レースというと殆どの日本人はフランスとイタリアをまず思い浮かべるはずだ。自転車および関連用品にもフランス製、イタリア製が目立つので、この2カ国が世界で一番自転車レースが盛んな国と多くの人が思っているに違いない。

しかしながら、フランスもイタリアも一番人気のあるスポーツは自転車レースでは無い。
他の欧州の国々においても自転車レースは確かに人気スポーツであるものの、その人気は2番目、3番目といったところであろう。ところがベルギーでは、自転車レースが間違い無く最も人気のあるスポーツで、しかも国家が自転車レースを「国技」として表明している世界で唯一の国である。何故かこの事は日本では未だにあまり知られていない。

近年になって「クラッシックレース」と呼ばれる伝統あるロードレースが日本でもTV放映される様になり、ベルギーにおいて、特に春のシーズンに多くのクラッシクレースが開催されている事実がようやく日本でも注目される様になって来た。

毎年クラッシクレースのシーズン開幕戦となる「オムロープ・ファン・ヘットフォルク」、そして「ゲント~ウエーフェルヘム」、「ツール・ド・フランダース」、「フレッシェ・ワロンヌ」、「リエージェ~バストーニュ~リエージェ」など100年近い歴史を持つ重要な「クラッシクレース」の多くはベルギーのレースである。これらのレースでは、TV実況生中継はもちろん、大勢の観衆が沿道を埋め尽くし、レースの結果は、夜のTVニュースで報道され、翌日の新聞の一面を飾る。

レースのスタートとゴールにも大勢の自転車レースファンが押し寄せ、その熱心振りにはフランス、イタリアのレース関係者も圧倒されてしまうというから相当のものであろう。

自転車王国ベルギー
自転車王国ベルギー

「世界一のレース開催数」

ベルギーは日本の四国とほぼ同じ面積に約1,000万人(東京都よりも約100万人少ない)が居住している小国である。しかし、自転車ロードレースの年間開催数は、ベルギーが文句無く世界一だ。ベルギー自転車競技連盟のレースカレンダーを見ると唖然とさせられる。シーズンは3月初旬から10月中旬の期間。レース数が多いのは5月~9月で、ほぼ毎日何処かの街でロードレースが開催されている。

最もレースの多い6月中旬~8月中旬は、子供からベテランまで全てのカテゴリーの合計で毎週平均70レースが行われているが、それはベルギー自転車競技連盟公認レースの数で、連盟が公認していない組織が運営する未登録者レースは含まれないと言うから、ひたすら驚愕に値する。しかもロードレースの殆どが一般公道で行われ、スタート&ゴールは大抵街の中心部に設定されている。まさに国技として自転車レースが一般の人達に深く理解されているからこそ、これだけの離れ業が可能なのであろう。

とにかく、日本人の想像を遥かに超える数のロードレースが、ベルギーでは毎年の様に行われているのだ。

「ベルギー選手のキャリアの価値」

この様な環境の中で生活している選手達は、実際に沿道でプロのレースを観戦したり、子供の頃からTVでレースを見ているし、子供のカテゴリーのレースを毎週の如く走るなど、自転車レースを身近なものとして育っているので、自転車レースに必要な駆け引きなどを熟知している選手が多い。

ランス・アームストロングが「ツール・ド・フランス」で7連勝したアメリカのチームのヨハン・ブラウネール監督がベルギー人である事。また、アメリカ以外の国でもベルギー人を監督または助監督として採用しているチームが複数存在するという事実からもベルギーの元選手達のキャリアがいかに高く評価されているかを見て取る事が出来る。

「自転車ロードレースと陸上のマラソン競技は、全く異なるスポーツである」とツール・ド・フランスで5勝したフランスのベルナール・イノーが本に書いているが、マラソンは年間多くても3~4レースしか走る事が出来ず、ひたすらトレーニングの毎日。しかし、自転車ロードレースでは、一流選手は年間120レース以上。 一般アマチュア選手でも年間80~100レースを走り、レース出場を最高のトレーニングと考えて活動している。

自転車ロードレースで強くなるためには、数多くのレースを走るしかない、そのためにはレース数の多い場所で活動する必要がある。ロードレースの数が少ない国出身で(アメリカ、オーストラリアなど)、現在プロ選手として活躍している選手の多くは、アマチュア時代からベルギーでレース活動を行っている。近隣のヨーロッパ各国の選手達もレース数の多いベルギーに頻繁に遠征し、レースを通じて、戦術などを学んでいるのである。

自転車王国ベルギー
自転車王国ベルギー

「実戦が生み出す高度な器材と用品類」

レースの開催数だけでなく、その内容と厳しさもベルギーのロードレースが世界一と言われている。 石畳の悪路で有名なレース「パリ~ルーベ」と同レベルの荒れた石畳の道路が今でも至る所に存在し、石畳路やレンガ道の上で当たり前の如くレースが行われているのだ。 この様な路面状況で使用する自転車には、駆動機能、軽さ、美しさに加え、激しい衝撃に耐えられる「頑丈さ」が要求される。

他の国のレースでは、全く問題無く使用されている自転車、パーツ類が、ベルギーのレースでは、簡単に破損してしまって使い物にならない、そういうハプニングは頻繁に発生しているので、自転車業界では、「ベルギーのレースで問題無く使用出来た自転車、パーツこそ、真のレース用品」と評価されている程なのだ。

選手が着用するウエアーに関しても多くのウエアーメーカーが、新素材を開発するにあたり、天候の変化が激しいベルギーのレースでテストを行っている。特に春先の「クラッシクレース」は天候の不安定な時季なので、レース中に突然、霙(みぞれ)や雹(ひょう)が降ってきたり、冷たい強風にさらされたり、過酷を極めている。

この様な厳しい気候環境においては、選手の体温を適切に保つための工夫がウエアーにとっては不可欠な要素となる訳で、ベルギーのレースを走った選手達の意見・要望が現在のサイクルウエアーに大きく反映されているのである。

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