通勤ライドで世界が変わる
勤勉なサイクリストなら、トレーニングの次に考えるのが通勤ライドだろう。なにも体力作りだけでなく、通勤ラッシュを避けたりできるメリットもある。
都心地下鉄などの朝の通勤ラッシュは、人と人が覆い重なり、なんと足が浮いてしまうこともあるそうだ。著者は、今やそういった事とは縁遠い生活をしているが、それも自転車があってこそ、といえる。
出版社やメディアとの打ち合わせや、取材にはほとんどの場合、都内であるなら100%自転車を用いる。多少の雨でも(先方さえ気にならないのなら)踏んでいく。電車やバス、あるいは自家用車を用いてもドアtoドアでないかぎり濡れるものは濡れる、というざっくりとした性格にもよる部分も多少ある。
それはさておき、通勤ライドは思った以上に快適だが、慎重になるべきことも多い。自らが急ぐ時間帯ということは、周囲も急いでいるということ。注意は時間に向けられ、意識せずとも運転は粗暴になり周辺視野が狭くなる。幹線道路など大きな通りでは唐突な左折や、強引な追い越しなど、肝を冷やす場面が多々ある。そんな状況下では、こちら側が余裕をもって立ち向かうしかない。オンタイムよりも10分早く出発するなど、余裕のライディングというのが気持ちよく走るコツだろう。
また、大胆に1時間早く家を飛び出し、遠回りして向かうというのも手だ。車通りが少ない時間帯を走る心地よさは、まるで週末のサイクリングのような得をした気分になる。その時間をトレーニングに充てるもよし、適度な運動を行えば一日をアクティブに過ごせるだろう。
もっとも煩わしいのは天候だろうか。雨とわかっていれば手段を選べるが、変わりやすい天候の場合はお手上げだ。天に祈りながら帰宅の時間を待つ。
レインウエア代わりにもなる、ウィンドブレーカーはいつでも持ち歩くようにするといい。またコンビニエンスストアで売られている、500円ほどの雨カッパは意外と重宝する。コンビニエンスストアで確実に購入できるこのカッパに何度助けられた事か。
夜間走行も注意が必要だろう。前回のコラム「ナイトラン」でも触れたが、視認性を高める重要なポイントとなる。そして普段以上に交通ルールを守ることが大切だ。
パーツの消耗は気になる所だ。もっとも消耗するのはタイヤ、ブレーキシュー、そしてライトの電源。タイヤはハードな用途に向いた耐久性重視のタイプがよいだろう。重量もアップするが、前向きに考えれば脚の鍛錬にもなる。悪路にも耐える強靭なアルミホイールは、絶対の安心感を得た上で走れるのが最大のメリットだろう。頑丈すぎると手入れを怠ってしまいがちだが、定期的にメンテナンスを行えば、さらにロングライフを期待できるだろう。
市街地などを通ったり、パブリックな場所を行き来するなら、カジュアルな普段着と合わせても良い。ペダリングしやすいようなバミューダパンツや、スニーカーなどを組み合わせると、スマートに乗れるだろう。スニーカーのペダリングロスを嫌うなら、フラットペダルに装着できるハーフクリップを用いると高回転ペダリングが行いやすくなる。
今年は記録的な寒さで、春の心地よい風を感じることはできなかったが、これからの季節は、より走りやすくなる。7月となれば暑さや日差し対策も必要になるが、通勤ラッシュよりはずっと快適なはず! なによりも通勤時間をフィットネスに充てることができるというシアワセ。通勤ライドを始めない手はない!
山本健一(やまもとけんいち)
自転車乗り。編集・ライター。自転車専門誌の編集・ライターが生業。昔、ちょっとだけレースをかじっていた経験あり。とはいえ成績はいまひとつ。
1976年生まれ。身長187cm、体重70kg。足のサイズは29cm。
写真家:和田やずか
1975年生まれ・千葉県出身。
97年よりツール・ド・フランスをはじめ世界の主要レースを撮影。代表作にエウスカルテルチームに帯同した写真集「R」、「f」がある。専門学校東京ビジュアルアーツ・写真学科スポーツゼミ講師。