密かな楽しみ、ナイトラン
やっと春らしい気温になってきた今日この頃。ようやくウォーマーを取り去り、気持ちよく走られるようになった。これから2ヶ月はサイクリングに最高の時期だ。ところで、春に限らず冬から取り入れているのはナイトランだ。
しかしながら、夜に走ることには抵抗があった。闇の中、ただ一人で黙々と走ると漠然とした恐怖心が生まれてくる。本能的に危険を察知するのか、図体の大きさはあまり関係ないようだ。それに打ち勝つ爽快感が、走り出すきっかけになったのだろう。
国道のような幹線道路でも都心部から離れれば、交通量は少なくなり走りやすくなる。微動だにせず規則正しく並ぶ街灯の明かりは、環境芸術のようにも見える。喧噪を忘れた静かな街並を流していると、頭の中のインフラが整備されていくのがわかる。帰る頃には心地よい疲労感と、すっきりとした思考回路、実に爽快な気分になる。気分転換に最適だったのだ。
友人の一人は早朝よりも帰宅後の深夜にトレーニングしているという。就寝前のトレーニングは睡眠を妨げることもあるが、職務に差し支えないようにするための心配りということだ(確かに朝練の後、日中はまどろむこともある)。一方でメリットもある。一日中身体を動かしているので、暖気が済んでいる。アップは程々に走り出せるのが良い。一日の労働で生じた脚のむくみも発散できる。
著者は早朝練習派であるが、時間が許せばナイトランも楽しむ。それが今ではリラックスできる欠かせないひとときだ。
グループライドもおすすめだ。日常とは異なって見える普段の風景を共有し、一様の達成感も得られる。規則に沿って走っていれば、周囲への自転車の印象もよくなるはずだ。走り終わってから、気になるカフェでお茶など、なかなかオツなもの。これが目当てでもきっかけとしては健全といえるだろう。
国道などの道の方がベターだろう。細く、見通しが悪いと通行人や自動車とのトラブルになりやすい。日中よりも視界が狭く、認識するまでに時間がかかるからだ。リフレクターなどの装備を怠らないなどの配慮を十分に行うのは大前提であるが。
前照灯は2つ装着すると、どちらかが使えなくなったときのスペアとしても良い。リアは赤いライト、あるいはリフレクターを必ず付ける。視認性を高め、自動車のドライバーに位置を認識してもらうためだ。また、ウエアも再帰反射素材を用いたものを着用すること。反射素材を用いたアンクルバンドや、リフレクター付きのレーサーパンツは、ペダリングにあわせて上下に動くので、よく目立つ。とにかく視認性を高めるのが安全に走るポイントだろう。セイフティマージンは過剰なほどに配慮するべきだ。
アイウエアを着用する習慣があるなら、クリアーレンズやイエローレンズへ交換すること。自らの視界を確保するのは、なによりも大切。日中と限り無く近い動体視力を発揮できるよう、努力しよう。
涼しいのもポイントだろう。初夏から初秋にかけては日中の炎天下とは違い、涼しい風が吹き抜ける。反面、春先はまだまだ冷えるのでウエアの重ね着を忘れないように。
ナイトランの制約は多いが、安全を確保し、他人に迷惑をかけないということが最も重要なこと。それさえ守れれば、あとは楽しむのみ。自転車とは走るだけの単純な行為だが、一歩踏み出せばいろいろな楽しみ方があるもの。時間を有効に使って、永く楽しみたいものだ。
山本健一(やまもとけんいち)
自転車乗り。編集・ライター。自転車専門誌の編集・ライターが生業。昔、ちょっとだけレースをかじっていた経験あり。とはいえ成績はいまひとつ。
1976年生まれ。身長187cm、体重70kg。足のサイズは29cm。
写真家:和田やずか
1975年生まれ・千葉県出身。
97年よりツール・ド・フランスをはじめ世界の主要レースを撮影。代表作にエウスカルテルチームに帯同した写真集「R」、「f」がある。専門学校東京ビジュアルアーツ・写真学科スポーツゼミ講師。